不妊治療中に、身体で見ていること —腹診・舌診・脈診で見る、数値だけでは見えにくい変化
不妊治療で「同じことの繰り返し」に感じる時
採卵を重ねていると、
「また同じ流れなのかな」
「前回と数値は違うのに、治療はあまり変わらないのかな」
「このまま続けていていいのかな」
そう感じることがあります。
FSH、LH、E2(エストラジオール)の値は、
毎回まったく同じではありません。
周期も、身体の状態も、
本当は少しずつ違います。
それでも、治療の流れは大きく変わらない。
そう感じた時に、
不安になるのは自然なことだと思います。
治療を大きく変えにくい場面もあります
不妊治療では、
薬や刺激法を工夫できる場面もあります。
ただ、すべての周期で、
大きく治療方針を変えられるわけではありません。
たとえば、
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受精はしている
-
胚盤胞まで育っている
-
培養成績が良い
-
その病院の培養技術に信頼がある
こういう場合、病院としては、
今の流れを大きく崩さずに進める判断になることがあります。
これは、何も考えていないということではありません。
特に、培養技術に強みのある施設では、
今の方法を急に変えにくいこともあります。
でも、身体は毎回同じではありません
ここで大切なのは、
治療の流れが同じように見えても、
身体まで同じではないということです。
患者さんご自身は、
「特に変わりません」
「いつも通りです」
「自覚はありません」
とおっしゃることがあります。
それで大丈夫です。
不妊治療中の身体の変化は、
はっきりした症状として出るものばかりではありません。
でも、実際に身体を診ると、
前回と同じではないことが少なくありません。
お腹の硬さ。
お腹の張り。
お腹のへこみ。
お腹の戻り。
冷え。
圧痛。
舌の色や苔の状態。
脈の強さや弱さ。
背中の緊張。
骨盤まわりのこわばり。
足やお腹の冷え方。
こうした変化は、
ご本人が気づいていないことも多いです。
血液検査の数値だけでは見えにくい変化も、
腹診・舌診・脈診では確認できることがあります。
腹診・舌診・脈診は、鍼治療の基本です
鍼治療では、
症状のある場所だけを見て施術を決めるわけではありません。
当院では、腹診・舌診・脈診を通して、
その周期の身体の状態を確認しています。
特に大切にしているのが、腹診です。
腹診では、
お腹の硬さや張りだけでなく、
お腹のへこみ、戻り、冷え、圧痛を見ています。
押した時に痛みが出る場所。
硬さが強い場所。
張っている場所。
反対に、へこみが目立つ場所。
そうしたお腹の状態には、
その時の身体の変化が出ていることがあります。
とくに、流産後や治療を重ねてきた方では、
ご本人が自覚していなくても、
お腹に独特のへこみが出ていることがあります。
これは、言葉では説明しにくい変化です。
痛いわけではない。
つらいと感じているわけでもない。
日常生活では気づかない。
けれど、腹診をすると、
お腹にその時の身体の状態が出ていることがあります。
だから当院では、
お腹のへこみや圧痛をとても大切に見ています。
舌や脈にも、身体の状態が出ます
舌診では、
舌の色、苔の状態、潤い、冷えや浮腫みの傾向を見ます。
脈診では、
脈の強さ、弱さ、緊張を見ます。
また、六部定位といって、
左右の手首の脈を分けて診ることで、
身体全体の状態を確認していきます。
お腹、舌、脈。
この3つを合わせて見ることで、
ご本人が自覚しにくい身体の変化を確認していきます。
そこに、
背中や首肩のこわばり、骨盤まわりの緊張、
足やお腹の冷え、胃腸の状態なども合わせて見ていきます。
同じ治療周期でも、
身体の出方は毎回違います。
だから、鍼の使い方も、
整え方も、毎回まったく同じにはなりません。
同じ治療でも、身体の整え方は変えられます
治療を変えることだけが、前進ではありません。
薬を変える。
刺激法を変える。
病院を変える。
それも大切な選択肢です。
でも、すぐに変えられない時もあります。
その時にできることが、
その周期の身体を見て、身体側を整えることです。
治療の流れが同じように見えても、
身体にはその時々の状態があります。
お腹のへこみが目立つ時。
お腹の硬さや張りが目立つ時。
圧痛が強く出ている時。
冷えが強い時。
胃腸の働きが落ちている時。
背中や骨盤まわりに緊張が出ている時。
脈に弱さや緊張が出ている時。
舌に疲れや冷えの傾向が出ている時。
その時の身体に合わせて、
施術の組み立てを変えていきます。
身体を責めるのではなく、身体を味方にする
身体を変えるというのは、
患者さんが悪いという意味ではありません。
努力が足りないという話でもありません。
むしろ、
ここまで治療を続けてきた身体を、
もう一度ていねいに見ていくということです。
血液検査の数値や治療方針は、
病院でとても大切に見るものです。
そのうえで、
数値だけでは見えにくい身体の状態を、
腹診・舌診・脈診で確認していく。
そこに、鍼灸で身体を整える意味があります。
当院で大切にしていること
当院では、採卵前、移植前、判定待ちの時期など、
治療の流れに合わせて身体を見ています。
血液検査の数値だけでは見えにくい部分。
ご本人が自覚しにくい身体の変化。
お腹のへこみ、硬さ、張り、冷え、圧痛。
舌の状態。
脈の状態。
背中、骨盤、冷え、胃腸の状態。
そうしたものを確認しながら、
その周期に必要な整え方を考えていきます。
治療の方針をすぐに変えられない時でも、
身体にできることは、まだあります。
同じ治療が続いているように感じる時こそ、
身体まで同じように扱わないこと。
その周期の身体を見て、
今できることを一緒に整えていく。
不妊治療の中で、
そういう支え方も大切だと考えています。
この妊活コラムの執筆者
関村 順一SEKIMURA JUNICHI
院長 鍼・灸・あマ指師


