卵子の質を上げる方法とは?
不妊治療に不妊鍼灸(東洋医学)が果たす役割はいくつかありますが、特に重視しているのは卵子の質の改善です。
病院の技術や手法の問題を別にすると、体外受精がうまくいかない理由のおおもとには、「卵子の質の問題がある」と考えていいでしょう。
もちろん、卵子の質が悪いと、タイミング法や人工授精も同様にうまくいきません。
目次
1.知っておくべき「卵子」について
1-1.年齢とともに減少する卵子の数
1-2.35歳を過ぎて変わる卵子の質の変化
1-3.卵子の質は生活習慣を変えることでよくなる
1-4.卵胞液の栄養状態をよくして卵子の質UP!
2.卵子に栄養が行かなくなる3つの理由
2-1.理由1:血液の質が悪い
2-2.理由2:消化機能が悪くなっている
2-3.理由3:毛細血管の血流が悪い
3.よい卵子をつくるためにやるべき5つのこと
3-1.【その1】体質に合った食材を選び、食生活を改善する
3-2.【その2】胃腸の調子を整えて、消化吸収をよくする
3-3.【その3】血流をよくして卵子に栄養を送る
3-4.【その4】ホルモンバランスを整える
3-5.【その5】免疫力をほどよく保つ
1.知っておくべき「卵子」について
卵子の質には数値などで表される客観的な基準がありません。また、西洋医学でも質をよくする決め手となる治療法はないのです。そこで、不妊鍼灸(東洋医学)によるケアの出番となります。
1-1.年齢とともに減少する卵子の数
卵子は女性がお母さんのおなかの中にいる胎児のころから形成されています。その数は胎児のころがピークで、おぎゃあと生まれた時には、卵巣の中におよそ200万個があります。
けれど、成長とともにどんどん減って、月経が始まることには、20~30万個に、そして閉経までにはほぼゼロになります。排卵によって減っていく卵子は1年に12個前後ですが、排卵以外にも卵子は自然に減っていきます。
月経の有無に関係なく、毎日約30個の卵子が減っていきます。
38歳ごろからは減少のスピードが顕著になります。卵子が新しくつくられるということはありません。
1-2.35歳を過ぎて変わる卵子の質の変化
卵子は、年齢とともに染色体異常が増え、卵子の質が低下します。
おおむね35歳を過ぎてからの卵子の質の変化には、2種類があります。
1)染色体異常の発生率が高くなる
受精後の卵子がうまく育たなくなって妊娠しない、もしくは流産が多くなるという現象。
⇒ 染色体異常に関しては、これを防ぐ方法は、残念ながらありません。
2)卵子の質が悪くなる
女性の年齢が高くなると、不妊になる人が多くなる原因です。質が悪くなることにより、受精しにくく、妊娠しにくくなります。
⇒ 改善できます。
体を健康にすることで、元気をなくしかけた卵子を妊娠可能な状態に戻すことができるのです。
1-3.卵子の質は生活習慣を変えることでよくなる
卵子は卵巣の中で、卵胞と呼ばれる袋の中に入っています。卵胞は卵子を育てるゆりかごのようなものです。卵巣の血流がよく、酸素や栄養が豊富ならば、卵胞の中は栄養で満たされて、良質な卵子が成長します。
ところが、卵巣に酸素や栄養が供給されないと、卵子が栄養不足になってしまいます。それによって、年齢が若くても卵子に力がなくなって、質のよい卵子が育たなくなり、妊娠しにくくなるのです。
一般的に、卵子の質は年齢とともに衰えていくと考えられていますが、それ以上に大きいのが、それまでの生活習慣です。
卵子は胎児の時からおなかの中にあるもので、新しくつくられるわけではありません。
そこで、卵子を包み栄養を送っている卵胞を満たしている卵胞液の栄養状態をよくして、卵子の質を上げられるのではないかと考えました。
1-4.卵胞液の栄養状態をよくして卵子の質UP!
卵胞液の栄養状態をよくするには、ただサプリメントをとったり、栄養のある食事をすればいいというわけではありません。お腹の中の卵巣、その卵巣の中にある卵胞まで栄養を届けるために重要なことがあります。
2.卵子に栄養が行かなくなる3つの理由
卵質を改善するための方法をいろいろ紹介する前に、卵子に栄養がいかなくなる理由について、見ていきましょう。
2-1.【理由1】血液の質が悪い
卵子の質をよくするには、卵胞液の栄養状態がカギです。栄養状態をよくするには、栄養バランスの整った、良質な血液が卵巣へ、卵巣から卵胞に送り込まれる必要があります。
栄養状態がよくなると・・・
★ 体を治す力が高まる
★ 細胞の入れ替わりがスムーズになって、悪い細胞が早く無くなる。
その結果 ⇒ 元気な細胞が増えていって、体の状態が健康になるのです。
2-2.【理由2】消化機能が悪くなっている
正しいバランスで食事をとっていたとしても、消化機能が衰えていると、栄養を十分に吸収することができません。
そうすると、血液に必要な栄養が吸収されなくなり、卵胞に栄養を送ることができなくなります。
●便秘
●胃もたれ
●食欲不振
こういった症状は、消化器官の疾患もありますが、自律神経の乱れによる影響も大きいです。
2-3.【理由3】毛細血管の血流が悪い
【血流障害とは?】
正しいバランスで食事をとり、消化器官が働いていたとしても、それを運ぶための血流が悪くなっていると、体のすみずみまで栄養を届けることができません。
【血流障害になる原因】
1)血糖値
血液内の高濃度のブドウ糖は、毛細血管に障害を与えて、その先を詰まらせます。
2)自律神経の乱れによる血管の収縮
興奮したりストレスを感じることによって交感神経優位の状態になり、血管が収縮して細くなります。
そこが詰まることによって、血流障害が起こります。
3.よい卵子をつくるためにやるべき5つのこと
「卵子の質を改善すること。」は、妊活においての大きなテーマです。 卵子の質がよくなれば、体外受精で良質な卵子が取れる確率が上がり、妊娠の可能性が上がり、自然妊娠の可能性も上がってきます。
3-1.【その1】体質に合った食材を選び、食生活を改善する
1)体に合った栄養を摂って、栄養たっぷりの卵胞液をつくる
血液は食事でとる栄養でできているので、血液の質を上げるには何を食べるかがとても大切になります。ここでは、マクロビオティックの考え方に基づく「陰陽」のバランスを基準にお伝えします。 人間の体質には「陰性」と「陽性」の2つの体質があり、それはその人がふだんどんな食べ物を食べているかによって変化します。 「陰タイプ」と「陽タイプ」では外見も、かかりやすい病気も違います。陰陽の中間にあたる「中庸」というタイプ。この「中庸」のタイプは、「陰」と「陽」が、ほどほどにあるということです。 この状態がいちばん健康的です。
2)「中庸」の体質を目指した食生活をスタートしよう
「中庸」とは、血液中のカリウム、ナトリウムのバランスがよい状態のことを指します。みなさんには、この「中庸」を目指してほしいと思います。 「中庸」になるためには陽性の人は陰性の食材、陰性の人は陽性の食材をとることです。
3-2.【その2】胃腸の調子を整えて、消化吸収をよくする
食べるものを変えるだけでは効果が出ない理由のひとつに、消化吸収が悪いことがあげられます。消化器官の働きが十分でないと、せっかくよい栄養をとっても、血液に吸収されず、体にまで届かないのです。
また、消火器の働きは自律神経と関わっているので、消化器官の問題以外に自律神経の不調が影響していることが多いです。
仕事や人間関係のストレスがあると、心も身体も緊張状態になり、交換神経優位の状態が続きます。
●便秘や下痢を繰り返す
●少し食べては胃もたれを感じる
●ちょっと疲れると食欲不振になって、食事を抜く
このような症状の人が、消化機能をよくするには、身体をリラックスさせ、自律神経を整えることが大切です。妊活にストイックになりすぎると、毎日の生活が窮屈になり、自立神経の働きに影響を及ぼします。
心がけてほしいのは、ストレスを解消し、心安らぐ時間を持つことと、なるべくストレスのもとを避けて、リフレッシュする方法を探すということです。
3-3.【その3】血流をよくして卵子に栄養を送る
卵子の質の低下でいちばん深刻なのは実は、血流障害です。
なぜなら食事の改善や消化吸収機能の向上よりも、改善に時間がかかるからです。
卵子は卵巣の中で、卵胞と呼ばれる袋の中に入っています。卵胞は卵子を育てるゆりかごのようなものです。卵巣の血流がよく、酸素や栄養が豊富な状態ならば、卵胞の中も栄養で満たされて、良質な卵子が成長します。
■血流障害が起こるの2つの理由
1)血管の内側がなめらかならば血液は順調に流れるのですが、血管の中にささくれのようなギザギザがあると、そこに血液中の物質が引っかかります。
少しなら問題ないのですが、ささくれが大きいと次々にいろんなものがひっかかってかたまりになり、あるときにそれがポロンと取れて、毛細血管に詰まってしまいます。
2)自律神経が乱れて交感神経優位な状態が続くと、体が緊張し血管が収縮します。
血管が収縮すると、血液の通り道が細くなってしまいます。
こういった血流障害があると、その周りの細胞は栄養がもらえず死んでしまいます。
このような血流障害が卵巣で起こるとどうなるでしょうか・・・?
卵巣や卵子に酸素や栄養が供給されず、卵胞が栄養不足になってしまい、卵子に力がなくなってしまうのです。
3-4.【その4】ホルモンバランスを整える
ホルモンバランスの乱れ=排卵のタイミングの乱れともいえます。
●卵胞が十分な大きさに育っていないのに、先走って排卵の命令が出てしまう場合。
⇒ 未熟な卵子が排卵されてしまう。
●排卵の命令が遅すぎてしまう場合。
⇒ 熟しすぎた卵子が排卵されてしまう。
このようなタイミングの狂った卵子は、妊娠できなかったり、妊娠しても流産しやすい卵子です。
これらの原因はホルモンバランスの乱れがあり、脳の問題があると考えられます。
排卵の周期が乱れているかどうかを知る3つの方法。
1)基礎体温を測る
(高温期が短い人は、28日周期であっても排卵のタイミングが正しくないことがあります。)
2)排卵チェッカーで知る
3)病院でFSHやLH(ホルモン数値)血液検査を受ける
・FSH(卵巣刺激ホルモン)・・・卵巣の発育をうながすホルモン。
(卵巣の機能が低下し、卵胞のホルモン感受性が弱くなると、数値が高くなります。)
・LH(黄体形成ホルモン)・・・卵胞がしっかり育ってきたら、排卵を起こさせるホルモン。
ここで重要なことは、自分の傾向を把握するということです。
月経周期が整うだけで妊娠の可能性がぐんとアップします!
よい卵胞が立ち上がるためには、その前の周期の高温期がきれいなことが大切です。体外受精の場合、排卵自体は薬で起こすことになりますが、その前から、ホルモンバランスを整えるように心がけるといいでしょう。
ホルモンバランスの乱れを整える上で心がけること
1)慢性的な肩こりはほうっておかないで、治療を受けたり、セルフマッサージやストレッチを習慣づけるといいでしょう。
2)脳をリラックスさせるのが効果的です。頭につながる筋肉をゆるめるには、肩、首などをほぐすと考えればいいでしょう。
拙著「赤ちゃんがやってくる 子宝レッスン」のP.47に「基礎体温のグラフ例」があります。排卵日のタイミングや、排卵が乱れている場合のグラフ例など、よろしければ参考になさってください。
3-5.【その5】免疫力をほどよく保つ
妊娠のために大切な要素に、免疫力があります。
どこかに炎症があったり病気にかかったりすると、体はそれを治すためにエネルギーを使います。
せっかく身体に取り入れたものも、病気の部分を治すことに使われ、細胞まで届かなくなります。
免疫は、高すぎてもアレルギー症状を起こしたり、リウマチや膠原病などの自己免疫性疾患の原因になります。よわすぎても、風邪が長引いたりと体力が低下する原因になります。つまり、免疫の状態をほどよく保つことが大切です。
ほどよい免疫力を保つための7つの方法
●質のよい睡眠をとる
●適度に身体を動かす
●疲れたら休憩をとって疲労やストレスをためない
●口呼吸をやめて、鼻呼吸に変える
(感染症にかかりにくくなります)
●乾布摩擦で皮膚の表面をこする
(自律神経が整うとともに、手足の血流がよくなります)
●低体温の人は体温を1℃上げる!
平均体温が1℃下がると、免疫力が37%も下がるといわれています。
注)平熱が36.5℃以上あり、あまり風邪も引かず免疫力が整っている人の場合は温めることがかえってストレスになる場合もあります。
●よく笑う!
がん細胞やウィルスを攻撃するナチュラルキラー細胞が活性化し、免疫力がアップします。
4.まとめ
妊娠を意識すると、あれもこれもと今までの生活をすべて改善しようと考える方がいますが、必ずしも完全な健康体が求められるわけではありません。
まずは、『自分の体質を知る』ということが、卵質改善の近道です。
多くの場合、不妊治療に使える時間は限られていますが、正しい西洋医学の治療と、不妊鍼灸やマクロビオティック(東洋医学)のケアを選ぶことができれば、3ヶ月~1年ほどで妊娠できるはずです。
拙著「赤ちゃんがやってくる 子宝レッスン」では、他にも「よい卵子をつくるためのセルフケア」や「妊娠の確率を上げるツボ押し&お灸」についてイラスト入りで詳しく説明しています。よろしければ参考になさってください。
あなたのもとにかわいい赤ちゃんがやってくることを心から応援しています。
この妊活コラムの執筆者
関村 順一SEKIMURA JUNICHI
院長 鍼・灸・あマ指師