2)子宮環境をよくして妊娠に至ったと思われる症例
子宮内膜が薄く妊娠に至らなかった症例に対し、子宮・卵巣・脳のホルモン調整を目的とした鍼灸治療を行うことで、自然妊娠に至った症例である。
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原因不明不妊(37歳)
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生理周期が短く、排卵が早すぎる
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エストラジオール不足 → 子宮内膜が育たない状態
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鍼灸で
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子宮・卵巣の血流
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脳(視床下部・下垂体)
を同時に調整
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排卵タイミングが整い、自然妊娠に至る
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2)子宮環境をよくして妊娠に至ったと思われる症例
「②子宮づくり」を行った症例を挙げる。
子宮内環境を西洋医学的に観察できる主たる検査は子宮鏡を用いたもので、子宮内のポリープや筋腫による卵管接合部の圧迫がないかなどを詳細に見ることができる。また、子宮鏡より不鮮明ではあるが、経腟超音波による検査でもポリープを発見できることがある。さらに、経腟超音波では子宮内膜の肥厚の計測が可能である。
子宮環境をよくすることで妊娠しやすい状態にするための一つの方法として「子宮内膜を厚くすること」が挙げられる。それには、子宮内膜を厚くする卵巣から出るホルモンである「エストラジオール(E2)」の量が増えなければならない。
鍼灸治療では、卵巣の血流を改善させ、ホルモン量を増やし、目的である子宮の血流もよくして、内膜を厚くしていくという方針になる。
【患者】
女性、37歳。
【初診】
さまざまな西洋医学的な検査を済ませたが問題が見つからず、「原因不明」と医師に言われ、当院に来院した。問診時に生理の状態をうかがったところ、生理の出血量がここ数年少なくなったという。生理痛はなく、塊もない。「生理周期が25日と短くなってきている」とのこと。
【所見】
腹診により胸脇苦満を認めた。また、右下腹および右耳の上辺りに邪気反応があった。
基礎体温表を見ると排卵日が10〜11日ごろと考えられ、問診で聞いた実際の生理と比べると、生理周期が25日と短くなっている。よって、排卵が早く、卵胞が十分な大きさにならずに排卵が起きてしまっていると推測した。
これはLH(黄体化ホルモン)という脳下垂体から出るホルモンが、エストラジオールの十分な上昇を待たずして大量に出てしまうことで引き起こされる。
したがって、「卵巣から出るエストラジオールの量が十分でなく、内膜が厚くならないのではないか」と考え、子宮周りの血流をよくするとともに、卵巣への血流および命令系統である視床下部−脳下垂体系への治療を行う方針を立てた。
【鍼灸治療】
症例1と同様に、血液の滞りをなくすために三陰交、また子宮周りの血流へのアプローチとして中極、さらにこの症例の場合は患者が月経不順のため、「子宮穴(奇穴、写真4)」も加えて、この3穴を基本穴とした。
1寸0番鍼で切皮程度に刺鍼し、15分間の置鍼。さらに、同穴に半米粒大の灸を行った。
また、頭部の邪気点を消去するため、胆経の右絶骨にも同様の治療を行った。脳下垂体の問題は胆経の反応が出ることが多く、この症例でも側頭部に邪気反応があり、触れると術者の手にピリピリとした感触が初診から感じられた。そのため、その感覚が消える胆経上の穴を探った。多くの場合、絶骨付近に反応がある。
【生活指導】
食事などに大きな問題点はなかったので、心理的プレッシャーを軽減させるため、「赤ちゃんがほしい」から「自然に授かればよい」という意識に変えていくように、できるだけ丁寧に話をした。
【経過】
4回の治療後、排卵までの日数が延びた。10診目の治療以降、「ここ2周期、おりものもはっきりと確認できるようになった」という。
これはエストラジオールが十分に出てきて、子宮内に精子を取り込めるように変化してきたことを示す。この点から、「脳下垂体−卵巣」のバランスが整ってきたと推測される。
15診目の治療後、自然妊娠に至った。2診目には頭部の邪気反応は消えていたことから、初診時にこの患者の治療の基礎は完成していたと推測される。
邪気が激しく出ている患者は、正気も十分にあり自然治癒力もあるため、邪気を取り除くと勝手に身体が治っていく。その後は子宮の血流をよくする基本穴と肝経の圧痛に治療を行うだけでよい。胸脇苦満も5診目には改善があった。
【考察】
中極、子宮などの基本穴がホルモンバランスを整え、子宮環境をよくして妊娠に至ったと思われる。
子宮内膜を厚くするためには、脳へのアプローチも必要だと考えている。
この妊活コラムの執筆者
関村 順一SEKIMURA JUNICHI
院長 鍼・灸・あマ指師


