3)卵管機能の問題解決をしたことにより妊娠に至ったと思われる症例
卵管の構造異常が明確でなくても、卵管周囲の緊張や自律神経の乱れを整えることで卵管機能が回復し、自然妊娠に至った症例である。
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41歳、人工授精7回不成功
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卵管の詰まりや癒着は画像検査では明確でない
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黄体機能不全、筋腫、下肢のむくみ、腹部の強い緊張あり
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精神的緊張が強く、自律神経の乱れが目立つ状態
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鍼灸では
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卵管周囲・骨盤内の血流改善
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肝経を中心とした緊張緩和
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消化器機能と自律神経の安定
を重視
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体外受精周期中も体質改善を継続
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卵管・子宮・自律神経の状態が整ったタイミングで
自然妊娠に至った -
卵子の質だけでなく、
卵管の「機能」に着目する重要性を示した症例
3)卵管機能の問題解決をしたことにより妊娠に至ったと思われる症例
「③卵管機能の問題解決」の症例を紹介したい。
先に書いたような卵管の詰まりや癒着などの異常を発見するために、西洋医学的検査では子宮卵管造影検査および腹腔鏡検査というものがある。しかし、この検査では卵管の機能性についてまでは検査ができない。そのため、現時点での妊娠の仕組みにおいて、この部分はブラックボックスとなっており、体外受精を行って妊娠して初めて、その患者が卵管の機能不全であった可能性が高いという診断に至ることがある。
【患者】
女性、41歳。
【初診】
これまで人工授精を7回続けて妊娠兆候は一度もなしという状況で来院。患者の希望は自然妊娠だが、今月から病院で体外受精を受ける予定で、鍼灸治療を併用したいとのこと。医師からは「人工授精は基本6回までで、それ以上行っても妊娠例はほぼゼロ」と説明されていたが、体外受精にはこれまで踏み切れなかった。しかし今回は決意したという。体外受精も鍼灸治療も初めてということで、緊張した様子が見られた。
【所見】
緊張のためか、早口で話が途切れないほどよく話す。自分の現在の状況を一通り話すと、少し落ち着いたようだった。
問診にて、黄体機能不全で、左の漿膜下筋腫が5cm(左の卵管をつぶしている)あることを話してくれた。生理に塊が混じる大きさは2〜3cmで、排卵が遅い。生理開始日から平均20日前後だという。下肢のむくみが顕著で恥骨の直上が硬くなっている。子宮筋腫に触れる。肩こり、腰痛、頭痛があり、足の冷えを自覚している。腹診すると、右期門に邪気がある。また腹部全体が硬い。
【鍼灸治療】
血液の滞りをなくすために三陰交を、月経不順に対しては子宮穴と中極を、消化器系の改善のために中脘を基本穴とし、1寸0番鍼で切皮程度に刺入し、置鍼を15分行った。さらに同穴に半米粒大の灸を行った。下肢の肝経の圧痛点にも上記の鍼灸治療を加えた。
さらに、曲骨とその2cm外方に寸6−3番鍼でひびきを感じる程度に刺入後、15分置鍼を行った。
【生活指導】
症例1の患者と同じく、忙しい仕事を抱え、徹夜で仕事をし、海外出張などもこなす生活全体が落ち着くことはない。仕事は楽しく辞められないが、子どもはほしいとのこと。
食事はマクロビオティックでいう「陰性」に変えてもらった。内容は症例1と同様である。
【経過】
患者の仕事の関係で体外受精が延期となったため、体質を変えるだけの時間をもらうことができた。
鍼灸治療は卵径部の緊張を解くため恥骨付近のツボを使用。すべてが同じ経穴ではなく、適宜変化を加えたが、基本的には肝経の治療を中心とした。腹部全体の硬さは16診目で改善の傾向が見えた。
その後、体外受精のHMG注射により筋腫は大きくなり、また腹部の緊張が強くなった。腹部の張りから注射はあまりよくないと考え、次回の体外受精は自然に近い方法の病院への転院を勧めていた矢先に、自然妊娠に至った。
鍼灸治療を受診していたときの人工授精などの結果は以下のようになる。
4診目:8回目の人工授精。子宮内膜12mm。結果は妊娠に至らず。
8診目:9回目の人工授精。子宮内膜11.6mm。結果は妊娠に至らず。
13診目:タイミングを計って夫婦生活。妊娠に至らず。
15診目:13診目と同じ。妊娠に至らず。
18診目:体外受精周期3日目。アンタゴニスト法で採卵数4。1つ移植するも妊娠に至らず。凍結もできなかった。
23診目:お休み周期。
27診目:自然排卵を待ち、タイミングを計って夫婦生活。妊娠反応が見られた。
妊娠に至るまで半年間かかった。その後12週目までは当院でケアを行った。
【考察】
体外受精は決して万能ではない。卵子の質がよく、卵管と子宮の機能・状態がよければ妊娠するということを忘れてはならない。卵子の質を上げる治療ももちろんだが、卵管の機能を改善したことが自然妊娠につながったと考えている。
【まとめ】
自然妊娠するには、先に上げた「食事、消化、循環」の3原則の次に、「自律神経の安定」や「心の安定」が大切になる。この患者の場合は卵径部の緊張を緩め、胃腸の動きを改善させたことで、免疫を強化し、自律神経の安定を目指した結果、よい結果につなげることができたと考えている。
また、この患者もそうだが、多くの患者をみていると古典にあるような「腎陽虚」の患者は少なくなっているように思う。
この妊活コラムの執筆者
関村 順一SEKIMURA JUNICHI
院長 鍼・灸・あマ指師


