不妊治療を始めるときの病院選びのポイント
これから不妊治療を始めるみなさんは、どういう基準で病院を選ぼうとしているでしょうか?
家や職場に近かったり、あるいは知り合いやネットの口コミで・・・と、病院選びでお悩みの方も多いと思います。病院選びは、不妊治療の結果を左右し、ひいては人生を変えてしまう大きな選択です。
ここでは、病院選びに役立つポイントをお伝えします。
目次
1.不妊治療を始めるときの病院選びのポイント
1-1.受けられる検査の種類をチェックする
1-2.検査の進むスピードをチェックする
1-3.病院によって体外受精の方法がいろいろあることを知る
1-4.病院の治療に“身体を合わせる”
1-5.東洋医学と西洋医学の両輪
1-6.鍼灸の治療ってどんなもの?
1-7.電話で直接問い合わせてみましょう
2.病院選び~その先の家族計画にも目をむけよう~
2-1.年代別妊娠スケジュールその1【33歳女性の場合】
2-2.年代別妊娠スケジュールその2【38歳女性の場合】
2-3.年代別妊娠スケジュールその3【41歳女性の場合】
1.不妊治療を始めるときの病院選びのポイント
1-1.受けられる検査の種類をチェックする
病院でどのような検査が受けられるかは、その後の不妊治療の結果を左右するほど重要になります。
一般的に不妊治療の方針を決めるための検査には以下のような種類の検査があります。
1)D3検査・・・不妊治療の基本である、月経周期3日間の血液でホルモン値を測る検査。
月経周期の3日目に行われることからD3(DAY3)検査とも呼ばれます。
病院によって、多少項目が変わりますが、以下の数値を調べます。
- FSH(卵巣刺激ホルモン)・・・卵巣の発育をうながす。
⇒ 卵巣の機能が低下し、卵胞のホルモン感受性が弱くなると、数値が高くなります。
- LH(黄体形成ホルモン)・・・成熟した卵子の排卵をうながす。
⇒ 卵胞がしっかり育ってきたら、排卵を起こさせるホルモンです。本来、FSHやE2と連動して体にとって最適な時期に大量に放出されるはずですが、この連動がうまくいかないと未熟な卵子や老化した卵子が排卵されてしまい、妊娠しにくくなります。
- E2(エストラジオール)・・・子宮内膜を厚くする作用をもつ。LHサージをうながす。
2)AMH検査・・・残りの卵子の数がわかる検査。
抗ミュラー管ホルモンという発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンを測るテストで、卵巣内にどれくらいの数の卵子が残っているかを推測します。
3)卵管造影検査・・・卵管に異常がないかを調べる検査。
子宮の入り口から造影剤を流し、レントゲンで子宮の形や卵管の通りなどを調べる検査です。痛い検査と思っている人も多いですが、最近では造影剤の刺激が少ないため、異常がなければあまり痛くないはずです。
卵管の通りが少し悪いくらいであれば、この検査でつまりが取れるという効果もあります。そのため、検査してからしばらくは、妊娠しやすくなると言われています。
1-2.検査の進むスピードをチェックする
時間をムダにしないことが大切な不妊治療ですが、検査の進むスピードには、同じ専門病院でも、大きな違いがあります。
1)D3検査(月経周期3日間の血液でホルモン値を測る検査)の場合。
- 院内で検査している病院・・・結果は即日知ることができます。
⇒ 検査結果を活かした治療がすぐに始められます。
- 外部に委託している病院・・・検査結果が出るには、早くても中2日くらいかかる。
⇒ 治療は生理周期に合わせて行うため、次の生理までに治療方針が決められないことがあります。
2)AMH(卵子の残りの数を推測する検査)の場合。
AMHの検査は、治療方針を決める大事な検査ですが、どこの病院でも受けられるわけではありません。
これから病院を選ぶ人は、AMHを受けられるかどうかも、基準にするといいでしょう。
3)卵管造影検査(卵管に異常がないかを調べる検査)の場合。
卵管が詰まっている場合は、タイミング法や人工授精では妊娠できないので、すぐに高度な治療を検討しなければなりません。
病院に卵管造影検査に必要な設備がないと、通院を続けてもなかなか治療がすすみません。
その場合は、それに代わるものとして卵管通水検査を希望してみましょう。こちらは大掛かりな設備は必要ないので多くのクリニックで導入されています。
卵管通水検査とは?
生理食塩水を子宮の入り口から注入し、子宮の内腔を充満させることによって、子宮の内膜の状態やポリープや粘膜下筋腫の有無などを調べ、その生理食塩水が左右の卵管にスム-ズに入っていくかどうかを確認し、卵管の通りをチェックする検査です。
最初の病院選びの時に、子宮卵管造影検査や卵管通水検査をいつ受けられるかを確認するといいでしょう。
1-3.病院によって体外受精の方法がいろいろあることを知る
不妊治療中の方の中には、体外受精を何回も試みているという方が多くいます。金銭的にも肉体的にも負担が多い状況だと思います。
正直にお話しすると、同じ病院で4回以上体外受精を繰り返してうまくいかない場合、そのままでは妊娠する可能性は低いです。
体外受精というのは、病院によって排卵誘発の仕方が違います。
個人のホルモンやAMHの数値によって適した誘発方法をその都度調べたらいいのですが、たいがいの病院ではその病院が得意とする誘発方法しかとられていません。
適した薬の量や採卵のタイミングには個人差がありますが、医師にとっても最初からそこを見定めるのは難しく、2回、3回と続ける中で患者さんに合った量やタイミングに調整されていきます。
病院によって、体外受精の方法はいろいろあるのです。
(例)Aクリニックの誘発方法・・・注射でホルモン剤を入れて複数の卵胞を成長させる方法
メリット・・・少しでも実年齢が若いうちに複数の卵子を採れる
- 残りの卵子の数に余裕があり(AMHの数値が問題ない)、妊娠のリミットまで間がある(FSHが高くない)患者さんには適する。
デメリット・・・卵胞を刺激する薬を多く使うので、卵巣が腫れて次の周期の治療に支障がでる場合がある
※卵巣年齢が若ければ、薬で多少卵巣が腫れて2周期治療を休むことになっても、大きな影響はありません。
- 残りの卵子が少ない患者さんの場合、強い注射を使っても、多くの卵子を採れる可能性が少ないので、飲み薬など弱めのホルモン剤で卵子を採る方法の病院の方がいいかもしれません。
1-4.病院の治療に“身体を合わせる”
東洋医学(不妊鍼灸)の体質改善で、自分の体を病院の治療に合わせるという方法があります。
Q.なぜ、人によって薬が効きすぎたり、あるいはあまり効かなかったりするのか?
A.それは、1人ひとり体質が違うからです。
西洋医学の薬は標準的な体質を想定して、量が想定されています。この標準的な体質とは東洋医学で言う「中庸」です。
中庸の体質になると、医師がねらった通りに薬が効きます。
つまり、「中庸」の体質になれば、医師がねらった通りに薬が効き、治療がよりスピーディに進むようになります。
残り時間が少ない人にとって、中庸の体質になることは、非常に重要なことなのです。
東洋医学(不妊鍼灸)を取り入れることで、病院選びも自在になり、より主体的に治療を進めることができるのです。
1-5.東洋医学(不妊鍼灸)と西洋医学の両輪
東洋医学(不妊鍼灸)を取り入れ「中庸」の体質を目指すのと同時に、卵子の質を上げることも大切です。
体外受精がうまくいかなかったり、せっかく受精した卵子がうまく育たないのは、やはり卵子の質が大きく影響しているからです。
赤ちゃんを授かるためのケアは、鍼灸などの東洋医学(不妊鍼灸)の力と、西洋医学の治療の両輪がからみあうことが大切です。ですから、「卵質」を上げながら、体外受精で使う薬がうまくはたらく身体づくりをしていきましょう。
このように、西洋医学の不妊治療と東洋医学の体質改善は深く結びついています。その両輪があってこそ、不妊治療は成功します。
「卵質」がよくなれば体外受精だけでなく、自然妊娠も人工授精もうまくいきやすくなります。
1-6.不妊鍼灸の治療ってどんなもの?
鍼 術(しんじゅつ)
鍼という道具を使って体に作用させ、病気の治療や予防をする。
灸 術(きゅうじゅつ)
皮膚の上のツボにもぐさをのせて燃焼させ、皮膚に湿熱による刺激を与えて病気の治療や予防をする。
鍼灸治療を行うことによって、気の流れのバランスを整え、症状が改善していきます。鍼や灸をするいわゆるツボは、大体の目安がありますが、人によって場所が微妙に違います。
鍼灸師は実際に触ったり手を当てながらツボの位置を探り、必要な治療をするのが仕事になります。
鍼灸治療は、1回で劇的に症状がよくなることもあれば、徐々に効果が出る場合もあります。
また、「鍼治療は痛いのではないか」と、心配する方がいますが、ごく細い鍼を使用するので、痛みはほとんどないといっていいでしょう。
鍼とお灸では使うツボが違います。
鍼は、痛みやコリがあるところに置きますが、お灸は、あまり痛みがなく触ると少しへこんでいるところに置きます。
拙著「赤ちゃんがやってくる 子宝レッスン」では、他にも、鍼と灸のセルフケアグッズや、それぞれのツボの場所をイラストと写真入りで詳しく紹介しています。よろしければ参考になさってください。
1-7.電話で直接問い合わせてみましょう
病院のHPなどでは検査に関する情報はあまりオープンにされないことがあります。
そういう時は、電話で直接問い合わせてみるのがいちばんです。
●「血液検査を受けたいが、結果が出るのにどれくらいかかるか?」
●「卵管造影検査を受けたいが、そういった設備があるか?すぐに受けられるか?」
などです。
その他、わからないことや不安なことがあったら遠慮なく聞いてみましょう。
あなたの質問や疑問を、窓口でしっかり対応してくれるかどうかは、その病院の雰囲気を知る参考にもなります。
2.病院選び~その先の家族計画にも目をむけよう~
女性が妊娠できる年齢はある程度の限界があります。
ですから、不妊治療の病院を選んだり、転院する場合は、「今、赤ちゃんが欲しい」という気持ちだけではなく、その先の家族計画にも目を向けてることが大切です。
現在、不妊治療をしている人、また、これから不妊治療を始める人も、まずは1人目の赤ちゃんを無事に授かることが目標でしょう。
ですが、不妊治療というのは、場合によっては大変時間がかかるものです。
妊娠期間というのは通常280日といわれています。
ここでは、女性の年齢別の妊娠スケジュールを提案していきます。子どもが2人、3人ほしいという方は、ぜひ自分にあてはめて考えてみてください。
2-1.年代別妊娠スケジュールその1【33歳の女性の場合】
早めに体質改善すれば、3人の出産も可能です。
30代前半に不妊治療を始めれば、時間に余裕がありますし、卵質の問題も少ないでしょう。
タイミング法を試みたあと、西洋医学の治療や東洋医学の体質改善に時間をかけたとしても、1~2年内に赤ちゃんを授かる可能性は高いと思います。
そこから2年おきに妊娠すれば、40歳手前で3人のお母さんになることも可能です。
出産後は育児ストレスや生活環境の変化があります。第2子以降も、自律神経の乱れや血流障害などの体質改善が必要な人はいますが、一度妊娠しているということは、体質改善が可能ということなので、安心してください。
2-2.年代別妊娠スケジュールその2【38歳女性の場合】
妊娠年齢のタイムリミット42.5歳を意識して準備をしましょう。
最近は、30代後半から不妊治療を始める人が増えているので、その場合は、かなり時間が限られてきます。
不妊治療で成功が見込める年齢の上限は、おおむね42.5歳です。
実際、私の患者さんでも42歳で来院された方は8割近く妊娠されていますが、43歳だと2割近くまで妊娠率が下がります。
40歳近くで子どもが2人ほしい方には、受精卵の凍結をおすすめしています。体外受精した受精卵を複数凍結し、希望のタイミングでおなかの中に戻す方法です。
※現在では、一般的な治療ですが、対応している病院を最初から選ぶ必要があるでしょう。
2-3.年代別妊娠スケジュールその3【41歳女性の場合】
すぐに体外受精と受精卵の凍結を検討するのをおすすめします。
41歳で不妊治療を始めると、妊娠できる期間は非常に限られています。
すぐに体外受精に進んだほうがいいでしょう。
次に妊娠できる年齢は早くて43歳です。体外受精が成功する確率がぐんと下がるので、最初から受精卵の凍結に対応している病院を選びましょう。
卵子はエイジングしてしまいますが、子宮の妊娠機能は43歳過ぎても問題がないといわれています。
卵子提供によって、60代でも妊娠した例があるほどです。43歳以上で妊娠している例も現実にはありますが、母子両方の身体のことを考えた場合、1歳でも年齢が若いときにできる手は打っておきましょう。
3.まとめ
不妊治療は、スピードが大切です。多くの方は30歳を過ぎ、初めて不妊治療の病院へ行くわけですから、時間を無駄にしないことが大切になります。
検査の進むスピードなどは、同じ専門病院でも大きな違いがあるので、これから病院選びをするときの参考にし、すでに通われている方も、転院先選びの参考にしてほしいと思います。
あなたのもとにかわいい赤ちゃんがやってくることを心から応援しています。
この妊活コラムの執筆者
関村 順一SEKIMURA JUNICHI
院長 鍼・灸・あマ指師