症例集Case study
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受精卵の状態をよくして妊娠に至ったと思われる症例
43歳 女性 の症例- 卵づくり
卵子の質を上げるためには、末端まで血液が行くように、瘀血治療と血液の質を上げる食事療法、消化器の治療を主として行わなければなりません。
初診 1- 体外受精を9回行う。(3回は移植するもすべて着床せず。)
- 最近は変性卵や空胞が目立ってきた。(年齢による卵子の異常が考えられる。)
- 加齢による染色体異常は避けられないことを理解しつつ、「よい卵子が出てくるのを待っていても、いつになるのか分からないし、もう出てこないかもしれない…。」という不安を抱えながら、当院へ来院された。
所見 2- 舌裏に怒張(血管などが、はちきれるようにふくれあがること)が見られる。
- 下腿、大椎の毛細血管が浮き出てくる。(瘀血症の特徴)
鍼灸治療 3①1寸-0番鍼で切皮程度に刺入したのち、置鍼を15分。さらに、同穴に半米粒大の灸を行う。
- 血液の滞りをなくすため、血海、三陰交。(写真1)を基本穴とする。
- 消化器系の改善・・・天枢、中脘などを使用。
②中極、曲骨、足三里にも、同様の治療を行ったほか、陰胞の圧痛部には寸6-3番鍼で少しひびきを感じる程度に刺入した。
お血(血がドロドロでスムーズに流れにくくなっている状態) の患者様は、肝経《足の陰側(内側)の真ん中を流れている経絡で、肝臓に関係する》 の経絡上に圧痛が多い傾向があります。
肝経の流注は陰器全体をくまなく巡るため、不妊治療では毎回必ず肝経の圧痛を探って、治療点に加えるようにしています。
生活・マクロビ指導 4- 塩を多く摂らない日を、『週に2日』作ってもらい、普段も塩分控えめにする。
- 水分を多くとる。
- 本人が苦手な『酢の物』などを多く食する。
この患者様は問診で、食事は「肉・魚・野菜」すべて食べるが、比率は、「野菜」より「肉・魚」がかなり多く、また、外食が多いということでした。
このように、ナトリウムを多く摂ってもらう食養指導をアドバイスした理由は、患者様の身体の状態が、マクロビオティック『陽性』の状態になっており、それは “ご本人の食生活の嗜好からきている” と考えたからです。
※マクロビオティックでは、『砂糖をなるべく摂らないようにする』 ということが基本となります。
経過 5①上記の鍼灸治療を35回にわたって行う。 《ほとんどは基本穴と肝経の圧痛点を目安に選穴を行った。ツボの多くは、陰包・蠡溝(写真2)・中都・中封(写真3)などであった。》
②自然周期での体外受精により、1つ採卵。
→胚盤胞という段階で凍結が出てきた。
③次の周期に自然周期での移植。
→移植周期は、排卵の2日前に計測した子宮内膜厚は5mmで十分だった。
④結果はプラスであり、妊娠となった。(43歳での妊娠成立となり、その後11週までは当院でケアを行った。)
考察 6- 3原則である「食事」、「消化」、「循環」すべてが整うと、卵子の質の向上が見込まれる。
- この症例では、9診目より舌下の怒張(血管などが、はちきれるようにふくれあがること)が薄くなり始めたが、多くの臨床ではもう少し早い段階で消え始める。
- この患者様の20年にもわたる仕事中心の生活と食生活の乱れが、治療反応の遅くなった一因だと思う。
- 臨床上、43歳という高齢でも卵子の質は変えられると感じている。
- 鍼灸治療によって、瘀血が改善されるとともに栄養が末端の細胞まで届き、体内で何らかの変化を起こす。
※この患者様は、9ヶ月ほどの鍼灸治療を継続したことで、受精卵の状態をよくして妊娠に至ることができたと考えている。
年齢的には厳しいですが、当院では、43歳までは多くの妊娠例を持っています。
『よい卵子を作るための環境づくり』を鍼灸で行うようにアプローチを行いました。